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アルツハイマー病のリスクが高い高齢者において、食事パターンが認知機能に影響を与えている

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疫学研究、地中海食、マインド食、食事パターン、アルツハイマー病、軽度認知機能障害(MCI)、認知症、記憶(力)、言語機能

ドイツにあるドイツ神経変性疾患研究センター(DZNE)が2021年3月に発表した研究によると、認知症の主要な原疾患となるアルツハイマー病になりやすい高齢者においても、「地中海食」※1や「マインド食」※2といった食事が認知機能、特に記憶力と言語機能の維持に影響することが明らかになりました。

この研究では、DZNEによる長期的な認知障害と認知症に関する研究(DELCODE Study)の参加者から389名(女性52%、年齢69±6歳)を対象としており、認知機能の低下を自覚する方、軽度認知機能障害(MCI)の方、家族にアルツハイマー病患者がいる方などのアルツハイマー病のリスクが高い高齢者が多く含まれています。参加者の食事パターンを分析し、地中海食とマインド食に当てはまる方を特定した上で、5つの認知機能(記憶、言語機能、実行機能、ワーキングメモリ、視空間機能)を評価するスコアとの関連について検討を行っています。
主な結果として以下のことが明らかになりました。

・地中海食およびマインド食を順守しているグループは、それ以外と比較して記憶力の向上が認められた。
・アルコール飲料に含まれる成分は、今回評価した5つのうち4つの認知機能(記憶力、言語機能、実行機能、ワーキングメモリ)の向上に影響することが示された。
・MCIの方(60名)を除外すると、地中海食とマインド食は言語機能の向上にも関連することが明らかになった。

これらの結果から、これまで高齢者全体を対象とした研究と同様に、認知症のリスクが高い方においても、地中海食やマインド食が記憶力と言語機能に関連することがわかりました。
研究発表を行った著者は、「アルツハイマー病のリスクが高くなってからでも、食生活の改善は“遅すぎる”とは言えないかもしれない。認知的に健康な人からMCIの人まで、認知症ではない人でも食事の摂取量は重要であり、認知機能の低下を遅らせるための介入を計画する際に考慮すべきであることを示唆している。」と述べています。

※1 地中海食:地中海沿岸部の諸地域(ギリシア、イタリア、スペインなど)で伝統的に食べられている食事のこと。オリーブオイル、魚介類、野菜、果物、豆類、ナッツ、乳製品が豊富で、赤ワインを適量飲む、といった特徴がある。
※2 マインド食:心疾患の予防効果が期待される「地中海食」と、高血圧症の予防効果が期待される「ダッシュ食(飽和脂肪酸とコレステロールを減らし、カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維を多めに摂る食事)」を組み合わせた食事様式のこと。

【原著論文】
Wesselman LMP, et al. Dietary patterns are related to cognitive functioning in elderly enriched with individuals at increased risk for Alzheimer's disease. Eur J Nutr. 2021 Mar; 60(2): 849-860. [PMID: 32472387]

新型コロナ対策による新しい生活様式は食生活にも変化をもたらしている

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官公庁調査、食事パターン、新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症対策に伴う「新しい生活様式」は、私たちの生活に様々な影響を与えていますが、食生活にも大きな変化をもたらしています。農林水産省が2021年3月に発表した「食育に関する意識調査報告書」によると、「新しい生活様式」が食生活の様々な側面で変化をもたらしていることがわかりました。

農林水産省は「食育に対する国民の意識を把握し、今後の食育推進施策の参考とする」ことを目的に、「食育に関する意識調査」を毎年行っています。2021年3月に発表された2020年度調査の報告書において、「新型コロナウイルス感染症と食生活について」と題し、感染症対策が食生活に与える影響について実態を明らかにしています。

主な結果として、以下のことが得られています。

・「新型コロナ感染症の拡大による食生活の変化」として「増えた・広がった」と回答した方が多い変化に、「自宅で食事を食べる回数」(35.5%)、「自宅で料理を作る回数」(26.5%)、「家族と食事を食べる回数」(20.0%)が挙がった。
・食生活の変化が「減った・狭まった」こととして、「おいしさや楽しさなど食を通じた精神的な豊かさ」(7.8%)が最も多く挙げられた。
・「変わらない」と回答した方の多い食生活は、「規則正しい食生活リズム」(82.5%)、「栄養バランスのとれた食事」(80.2%)が多かった。
・「栄養バランスのとれた食事」が「減った・狭まった」と回答した方の割合は1.7%と低かったが、性・年齢別にみると男性の20代(3.9%)・30代(6.3%)および女性の20代(3.0%)は割合が高くなっていた。

これらの結果から、「新しい生活様式」は食生活に様々な変化をもたらしていることがわかります。新型コロナウイルス感染症の今後の動向次第では、このような食生活の変化が定着していく可能性もあります。自宅で食事を作って食べる回数が増えている傾向は、「栄養バランス」への配慮がしやすくなったとも捉えられますので、食生活を見直す機会と考えてみるのはいかがでしょうか。

【出典】
農林水産省. 食育に関する意識調査報告書(令和3年3月). [リンク1リンク2]

6月14日は認知症予防の日

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人物、記念日、アルツハイマー病、認知症

「認知症予防の日」をご存じでしょうか。
日本認知症予防学会( ホームページ )が認知症予防の大切さをより多くの人に伝えることを目的に制定しました。
認知症の主要な原因とされるアルツハイマー病を発見したドイツの医学者・精神科医のアロイス・アルツハイマー博士の誕生日(1864年6月14日)から、6月14日を「認知症予防の日」と定められました。

アロイジウス・アロイス・アルツハイマー(Aloysius Alois Alzheimer, 1864年6月14日生~1915年12月19日没)は、ドイツ・バイエルン州出身の医学者、精神科医です。

1901年に当時勤めていたフランクフルト私立精神病院にて診療したアウグステ・データー (Auguste Deter)という記憶力低下・妄想などを訴える女性患者を、死亡に至るまでの5年間にわたり詳細に記録しました。彼女は51歳でなくなるまで約10年間、記憶障害に始まって認知機能が急速に低下し、現在でいう若年性アルツハイマー病に伴う認知症の様々な症状を呈しました。この記録を1906年に南西ドイツ精神医学会に発表し、この症例が後に「アルツハイマー病」、「認知症」として広く認知されるきっかけとなりました。

アロイス・アルツハイマーは、当時はまだ新しい技術であった動画や、写真などを積極的に使って症例の映像を残すなど、先進的な医師でもあったようです。医療用の研究機器として導入されはじめたばかりの顕微鏡の魅力にはまり、これがアルツハイマー病の神経病理の詳細な記録を可能としました。

このような先人の努力によって「アルツハイマー病」、「認知症」の概念が確立され、現在の予防や治療の研究につながっているのです。

【参考】
コンラート・マウラー. アルツハイマー―その生涯とアルツハイマー病発見の軌跡. 保健同人社. 2004年.