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久山町研究の結果を用いて将来の認知症リスクを予測するツールが開発される

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疫学研究、軽度認知機能障害(MCI)、認知症、認知機能低下リスク

九州大学が長年続けている大規模疫学研究「久山町研究」は、日本でも屈指の疫学研究として、生活習慣病の有病率やリスクについて、日本の医療に貢献する数々の有益な調査結果を残してきました。1)
今回、「久山町研究」の研究成果として、追跡調査の成績を用いて開発した「10年後の認知症発症リスクを予測するためのツール」の報告を行っています。
この報告は、九州大学大学院医学研究院の二宮利治教授、本田貴紀助教(衛生・公衆衛生学分野)、中尾智博教授、小原知之講師(精神病態医学)らの共同研究グループによるもで、米国アルツハイマー病協会が刊行する医学誌「Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring (DADM)」に、2021年7月28日(現地時間)掲載されています。2)
この研究は、認知症のない65歳以上の久山町住民約800名を24年間追跡し、健康診断で測定できる健康状態から、現在から10年後に認知症を発症する確率を高精度に予測する計算式(予測モデル)を作り出しました。さらに、この予測モデルを元に容易に計算可能な簡易スコアを作成しています。この簡易スコアに用いる健康状態は「年齢」、「性別」、「教育を受けた期間」、「高血圧症の有無」、「糖尿病の有無」、「BMI※」、「脳卒中の既往の有無」、「現在の喫煙習慣の有無」、「日中の着座時間の長さ」の9項目で、健康診断を受けていればどなたでも計算できるものになっています。

予測モデルの較正と簡易スコア

【参考図】
予測モデルの較正と簡易スコア4) 左図はモデルで予測した発症割合と実際の発症割合がほぼ一致していることを示す。
右図は簡易スコアとスコアから予測した発症割合。

今回の研究について、研究報告を行った研究者は「長期にわたる追跡調査から精度の高い発症予測モデルが開発できました。今後、実用化に向けた取り組みを進めていきます」と述べています。4)
こうした誰でも手軽に使用でき、しかも精度の高い予測ツールは、全世界でその患者数が急増している認知症にとって、将来の発症リスクが高い人を早期に見つけ出し発症を遅らせるための適切なケアにつなぐ重要な役割を持つものとして期待されます。

※ BMI (Body Mass Indes; 体格指数): [体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出される値。肥満や低体重(やせ)の判定に用いる。3)

【出典】
1) 九州大学医学部. 久山町研究. [リンク] (最終アクセス:2021年11月1日)
2) Honda T, et al. Development of a dementia prediction model for primary care: The Hisayama Study. Alzheimers Dement (Amst). 2021 Jul 28; 13(1): e12221. [PMID: 34337134]
3) 厚生労働省. e-ヘルスネット. BMI. [リンク] (最終アクセス:2021年11月1日)
4) 4) 九州大学. 将来の認知症発症リスクを予測するツールを開発:久山町研究. [リンク] (最終アクセス:2021年11月1日)

新型コロナは社会的孤立を作り出し、認知機能にも影響を及ぼしている

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疫学研究、新型コロナウイルス感染症、認知機能低下リスク

新型コロナウイルス感染症対策には「人との接触機会の減少」が重要とされ、いわゆる「新しい生活様式」において、同居家族以外との直接的な交流は自制が求められる社会環境が根付きつつあります。それにより、これまでの交流によって築き上げた人とのつながりが失われ、社会的な交流が著しく少ない状態である「社会的孤立」に陥る危険性があります。

その状況を明らかにするために東京都健康長寿医療センター研究所は、2020年8月~9月に実施したインターネット調査のデータ(全国の15~79歳の男女28,000人中、解析対象25,484人)を用い、コロナ流行前と流行中の社会的孤立状態の変化と精神的健康との関連を調べ、公衆衛生の国際医学誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」に報告しています。1)
この調査研究の中で、社会的孤立は、「別居の家族や親戚」および「友人・知人」を相手とした「対面交流」、「メッセージのやり取り」、「音声での通話」、「ビデオでの通話」の4種の交流についてそれぞれの頻度を尋ね、これらの合計が週1回未満であることと定義しています。これらの頻度について、2020年1月(コロナ流行前)と8月(コロナ流行中;調査時点)の2時点について尋ね、その変化を分析しています。
その結果、
・社会的孤立者割合は、コロナ流行前は21.2%だったのが、コロナ流行中には27.9%であり、6.7ポイント増加している。
・その程度は、男性であるほど、高齢であるほど大きい。
・教育歴や所得によって社会的孤立者割合の変化に違いは見られず、社会経済状態による格差はコロナ禍でも維持されている。
・「コロナ流行前から変わらず孤立していない者」に比べ、「コロナ禍で孤立した者」は孤独感が高く、コロナに対する恐怖感が強い。その程度は「コロナ流行前から継続して孤立状態にある者」よりも強い。
といったことが明らかになりました。

新型コロナは社会的孤立を作り出し、認知機能にも影響を及ぼしている

コロナ流行前・中の社会的孤立者の性・年齢での違い

コロナ流行前・中の社会的孤立者の性・年齢での違い2)

この報告を行った研究者は、研究の意義として「社会的孤立対策では、コロナ禍で孤立した人への支援が特に重要であり、どのような層で孤立化が深刻かを提示することができた」とコメントしています。2)
認知機能の維持においても社会的な交流は重要な役割を持ち、社会的孤立は知的な刺激の減少や抑うつなど、少なからぬ影響があると考えられており、この結果はその対策を検討するうえでも重要な示唆を与える結果と受け止められます。

社会的孤立が与える認知機能の影響については、国立長寿医療研究センターが中心となった研究チームが、米国の医学誌「Journal of the American Medical Directors Association」に報告しています。3)
この調査研究は、岐阜県美濃加茂市の65歳以上の男女2,000人を対象に2020年3月(1回目の緊急事態宣言発出前)に調査票を送り、回答を得られた1,350名に対し2020年10月(コロナ流行中)に2回目の調査票を送ることで調査を行っています。
この調査研究の中では、「社会的孤立」を「一人暮らし」、「友人との交流が月1回未満」、「地域の活動に参加していない」などの5項目のうち3項目以上に当てはまる場合と定義しています。また、「認知機能の程度」の評価は、「食事や衣服選びなどについて自分で判断できるか」といった質問を通し、「自分の考えをあまりうまく伝えられない」といった場合に、認知機能に障害があると判断しています。 2回目の調査に回答した70歳以上の人のうち、1回目の調査で認知機能に問題がなかった955人について、社会的孤立と認知機能障害の関連を分析したところ、
・1回目の段階では孤立していなかったのに、2回目の時点で孤立していた人が認知機能障害となる確率は、1回目・2回目ともに孤立していない人と比べて2.7倍だった。
・1回目、2回目ともに孤立し続けている人では同じく2.3倍だった。
という結果が得られました。
この結果は、コロナ禍による孤立が認知機能の低下をもたらすのでは、という懸念を裏付けるものとして重大に受け止められるものです。

こうした状況を打開するためには感染対策を十分に行ったうえで交流できる場を積極的に設けたり、オンラインの活用をサポートしたりするなど、地域での取り組みによって社会的孤独を減らすことが重要になると考えられます。
加えて、自分でできる対策として、ウォーキングなどの適度な運動、パズルゲームなどの一人でできる知的活動、多様で栄養バランスの取れた「食」への配慮といった、日常生活で認知機能の低下を抑える習慣を積極的に取り入れることが、これまで以上に意義を持つと考えられます。

【出典】
1) Murayama H, et al. Increase in Social Isolation during the COVID-19 Pandemic and Its Association with Mental Health: Findings from the JACSIS 2020 Study. Int J Environ Res Public Health. 2021 Aug 4; 18(16): 8238. [PMID: 34443988]
2) 東京都健康長寿医療センター研究所. <プレスリリース>「コロナ禍では男性・高齢であるほど社会的孤立に陥りやすく、孤独感に深刻な影響:約3万人への全国調査にて判明」. [リンク] (最終アクセス:2021年11月1日)
3) Noguchi T, et al. Social Isolation and Self-Reported Cognitive Decline Among Older Adults in Japan: A Longitudinal Study in the COVID-19 Pandemic. J Am Med Dir Assoc. 2021 Jul; 22(7): 1352-1356. [PMID: 34107288]

認知機能に関連する機能性をうたう機能性表示食品(2021年7月・8月届出分)

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機能性表示食品

機能性表示食品
機能性表示食品

・ 2021年10月1日に消費者庁「機能性表示食品の届出情報検索」を用いて当会が検索した内容に基づいて作成しています。
・ 商品の詳しい情報や販売状況などは、届出を行っている事業者(届出者)にご自身で確認してください。当会では回答できません。
・これらの機能性表示食品は当会が機能性を確認したものではなく、当会が使用を推奨するものではありません。使用にあたっては、届出者が公開している商品情報を確認の上、ご自身で判断してください。
・機能性表示食品とは、「事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものです。」(消費者庁.機能性表示食品についてより)と説明される、保健機能食品のひとつです。詳しくは、当ホームページの「お役立ち情報コラム」内の「保健機能食品と認知機能」を参考にしてください。