食と認知機能の
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COLUMN

食から認知機能について考える

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 前院長・顧問 大内 尉義

 認知症は、原因によっていくつかの型に分類されますが、日本で特に多いのはアルツハイマー型認知症、もしくはアルツハイマー病(AD)と呼ばれる認知症で、世界的にも最も多い神経変性疾患とされています。
 アルツハイマー型認知症は、記憶力や判断力の低下により日常生活にさまざまな問題が起きてくる病気です。この認知症ですが、日本の認知症の患者数は、500万人を超えており、内閣府の高齢社会白書によりますと、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になると予想されております。

 認知症の治療については、これまで、様々な認知症治療薬や臨床試験が行われていますが、残念ながら、現在、アルツハイマー型認知症を元の状態に戻す治療法はありません。国内外の製薬企業による認知症治療薬の開発が進められていますが、あまり順調ではないというのが実情です。

 日本では超高齢社会で認知症のリスクが高まる高齢者が増加している背景もあり、今後認知症は急増し、さらに大きな社会問題となると考えられています。このような状況下、認知症に対し早期診断・早期治療を行うことは言うまでもなく非常に重要です。

 つい最近まで、認知症の一次予防(認知症にならないようにするための予防)は不可能と思われていました。しかし、欧米諸国の研究を中心とした近年の科学的エビデンスの蓄積から、発症予防の可能性が示されてきています。
 世界保健機関(WHO)の作成したガイドライン「認知機能低下および認知症のリスク低減」によれば、認知症は全く避けられないものではなく、ライフスタイルの改善等によりリスクを減らすことで予防が可能であると謳っています。身体活動、禁煙、栄養、アルコール摂取などの12の介入手段をエビデンスと推奨レベル付きで提示しており、例えば栄養摂取に関しては、「地中海風の食事療法は、認知機能低下および認知症のリスクを軽減するために、正常な認知および軽度の認知機能障害を有する成人に推奨され得る」というステートメントを掲げています。
 また、欧米諸国では,食事や食品成分を活用した認知症の予防や進行防止に関する研究が幅広く展開され、例えば、DHA等の多価不飽和脂肪酸やビタミン類など、複数の高機能食品成分を取り入れた認知症患者に対する栄養療法が始まっておりますし、また、認知症予防に適した食事習慣を知るために高齢者を対象とした大規模な疫学研究も行われています。

このように、長年の研究より「健康的な食習慣による認知症の予防」の確からしさは検証され、大きな期待が寄せられています。こうしたことから、今まで以上に、食や食生活に焦点をあて、生活習慣の改善での認知症予防法の普及について考えていくべきだと考えます。

 こうした認知症予防を取り入れていくうえで重要なのが、「科学的エビデンス」、すなわち、その効果の確からしさが科学的に証明されているか、その証拠となる研究データです。
 食品成分のもつ機能性を活用した食品と健康に関する研究の成果として、生活習慣病改善の分野で「特定保健用食品」が開発され、また、2015年より、「機能性表示食品」という新しい制度も整備され、多くの「認知機能の改善」等を謳う機能性表示食品、サプリメントが実際に発売されてきました。しかし、こうした商品の多くは、エビデンスが十分でない状況で市販されているのが現状です。
 さらに、科学的なエビデンスのない不正確な情報も蔓延しており、専門知識を有さない一般の生活者に誤解を与えかねない状況にあります。
 このような状況の中、正しい情報を拾い上げて自分の生活に取り入れていくことは難しいかもしれません。そのため、われわれの設立した「食から認知機能を考える会」では、食や生活習慣から脳の認知機能低下の抑制・予防に繋がる最新の科学的エビデンスがある情報を一般の生活者へわかりやすく発信することを目的にしていますので、ご期待ください。

 まずは、食から認知機能について考え、認知症の一次予防に取り組んでください。その際、機能性表示食品などを検討する際には「科学的エビデンス」を意識して、効果がどのように説明されているかを確認して、ご自身が納得したものを取り入れてみてください。